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日常的な監督業務の多くは、SIBから証券・先物業協会(SFA)をはじめとする業態別の自主規制機関(SRO)に再委任された。
こうした独特の規制体系は、「法の枠組みの中での自主規制」と呼ばれる。 一方、米国では、一九二○年代の強気相場を背景に、証券市場における様々な不正が横行したとの反省に立ち、連邦レベルの証券法や証券取引所法が制定され、監督機関として証券取引委員会(SEC)が設置された。
このSECは、行政機関だが、通常の省庁とは異なる性格を有する。 大統領が議会の承認を得て任命する五人の委員によって構成される、高度の独立性を認められた行政委員会である。
技術的で専門性の高い証券行政には、一般の省庁とは異なる組織形態で当たることが適切と判断された。 このように、英国や米国の証券市場規制では、行政機関の機能を補完したり代行したりする民間の自主規制機関が広く活用されてきた(614)。

証券市場に自主規制という独特な規制手法が用いられる理由としては、第一に、仕組みが複雑な証券市場で現実的な規制を行うためにはあらゆる業界事情に精通している必要がある、第二に、変化が激しいために柔軟な対応が求められる、第三に、政府や納税者が規制コストを削減できるといったことがあげられる。 最後の点については、少し説明が必要かもしれない。
すなわち、市場関係者が厳しい規制を自ら行えば、市場の公正さと信頼度が高まり、結果的には証券業界が全体的に潤うのだから、規制によるメリットを享受する証券業界自身がコストを負担する受益者負担になっているという考え方である。 最近になって、英国でも、米国でも、証券市場規制における自主規制のあり方が変化しつつある。
英国では、一九八六年金融サービス法を改正して成立した二○○○年の金融サービス・市場法によって、従来の業態別に組織された自主規制機関は廃止され、規制・監督の権限がSIBを改組した金融サービス庁(FSA)に一元化された。 FSAは、前身であるSIBと同じく、法的な組織形態は民間の会社であり、その点を強調して「金融サービス機構」と邦訳されることもある。
しかし、SIBとは異なって法律に明確な設置根拠規定が置かれ、幹部が財務大臣によって任命されるなど、限りなく行政機関に近い性格を有する。 あえて自主規制の名残を求めるとすれば、FSAの運営費用が、税金ではなく、規制対象となる金融機関が納める各種の手数料によって賄われている点くらいであろうか。
これに対して、米国では、NASDによる自主規制そのものが否定されているわけではない。 しかし、NASDが、全ての証券会社に係わる自主規制機関であると同時に、ニューヨーク証券取引所と並ぶ世界最大級の株式市場であるナスダック市場の運営主体でもあるという二重性が、問題視されて自主規制機関としてのNASDが創設されたのは、既に触れたように、一九三八年の証券取引所法改正による。
当時、取引所に上場されない株式の取引は、証券会社が自らの判断で売りと買いの気配が残る。 しょせんは私的な組織である以上、公益に反した行動に走る危険性もないとは言えないので、米国のSECや英国のSIBのような上部機関を設けて監督せざるを得ないという点も、ある意味で値を提示して顧客と交渉する店頭取引の形で行われていたが、同じ銘柄の株価が証券会社によって異なるなど透明性を欠き、不正の温床になりかねないということで、規制の導入が図られたのである。
こうしてNASDによる監督の対象となった株式店頭市場に、一九七一年になってコンピュータ・ネットワーク上で気配情報や取引情報を表示するナスダック・システムが導入された。 これがナスダック市場の起源である。
その後、アップル・コンピュータ、マイクロソフト、インテルといったハイテク企業が次々に株式を公開したことで、ナスダック市場は世界的な株式市場へと成長を遂げた。 一九九四年になって、ナスダック市場の問題点に焦点が当てられることになった。

それまで、ナスダック市場は、銘柄ごとに任命されるスペシャリストと呼ばれる特別な業者が売買需給の調整を行いつつオークション方式を基本とする取引仕法をとるニューヨーク等の証券取引所と異なり、マーケット・メーカーとなった証券会社が、競争的に気配を提示することで高い流動性と効率性が維持されているとみられていた。 ところが、ある学術論文がきっかけとなり、「ナスダック市場のマーケット・メーカーが談合し、自らの利益を図るために奇数の呼び値を避けて、売り値と買い値のスプレッドを必要以上に広げているのではないか」との疑惑が持ち上がったのである。
結果的に、この疑惑は、NASDの大幅な機構改革につながった。 もともとNASD会員業者の全てが、ナスダック市場の取引に参加しているわけではなかった。
NASDは基本的に全ての証券会社を会員として網羅する自主規制機関であり、会員には債券取引の専門業者も少なくなかった。 談合疑惑によってナスダックに対する世論が厳しさを増し、ナスダックと同一視されたNASDへも批判の矛先が向かったことで、株式を取り扱っていない会員業者や株式を取り扱っていてもマーケット.一九九五年以降進められた機構改革では、NASDの自主規制機能と市場運営機能を分離し、それぞれの機能を、持株会社となったNASD傘下の二つの子会社(ナスダック社とNASDIR社)に別々に担わせることとされた。
その後、ナスダックがナスダック・ジャパン市場の創設をはじめとするビジネス戦略を先鋭化させた時期には、組織の一体化が志向されるなど、若干の揺り戻しもあったが、ラドマン委員会が勧告した機能分離は、最近になってますます明確化している。 二○○○年四月以降、NASDはナスダック社に対する出資比率を徐々に低下させており、最終的には独立の取引所として株式公開する方針である。
前触れたナスダック・ジャパンからの撤退が決断された背景にも、ナスダックの将来の株式公開を前提とした場合、不採算事業を早めに整理しておく必要があるとの判断が強く働いていたとされる。 他方、NASDは、二○○二年六月に自主規制機能を担ってきたNASDlR社を吸収し、自主規制機関という本来の機能に純化することを改めてこうした米国の動向は、わが国にとっても無視し得ないものである。
わが国の証券市場における自主規制は、いわば米国の制度を輸入して形成されたものだからである。 わが国の自主規制機関である日証協は、かつてのNASDと同様、J市場(株式店頭市場)という株式市場の運営主体でもある。
そればかりでなく、税制改正要望の取りまとめといった業務内容を明確にした。 ブローカレッジ業務に徹していた業者などの潜在的な不満が噴出したのである。
このため、一九九四崖改革論議が始まった。 界団体としての役割も果たしている(615)。
こうした役割はNASDにはなく、自主規制と無縁な米国証券業者協会(SIA)や債券市場協会(TBMA)が担っている圧力団体的な機能に近い。 このように様々な機能を有する日証協だが、二○○一年二月には、それまで株式店頭市場の取引システム運用にあたってきたJ・サービス社を株式会社Jと改称し、市場運営会社としての性格を明確にした。


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